私は入局して5年目となりますが大学の卒業自体は2006年度です。学生として学んでいた当時は自分も含めリハビリテーション医学に対しての認識は非常に薄く、座学も整形外科学の1コマしか無かったため整形外科の一部としか見ておりませんでした。その後、リハビリテーション医学の発展および医療全体における普及はめざましいものがあり、当教室で学ぶこととなった当初は(今となっては恥ずかしいお話ですが)、以前とはまったく認識が異なっていたことに驚いたものです。
リハビリテーション医学は今なお発展途中の分野でもあります。発展途中であるということは決して悪いことではなく、自ら未知の分野を切り開いていけるということでもあります。現に研究の分野は広がっており、近年はロボットリハビリテーションなど最新の機器を取り入れた研究も盛んとなっております。
以前よりリハビリテーション医学では歩行などに対して動作解析という手法が用いられてきましたが当院では伝統のあるVICONという広い空間の三次元動作解析システムを有しており、大学病院では全国でも有数のものです。また細かなと動作してアイトラッキング、ハンドトラッキング、多関節間のモーショントラッキングのための機器も備えております。また総合大学であるため他学部との連携も取りやすい環境にあります。こういった研究は大がかりな装置は必ずしも要さず現在勤務している市中病院でもマイクを使用した音響解析、X線透視による嚥下動作解析に取り組んでおります。
リハビリテーション治療の対象はあらゆる能力障害であり、出生直後の低心肺機能の始まり加齢に伴う能力障害まで人生の全期、また脳血管障害や虚血性心疾患を始めあらゆる臓器の内部機能障害および外傷などを、入院を要する急性期、回復期から退院後の生活期に至るまでの過程全てを扱うこととなります。それだけにあらゆる分野の研究が行えるということでもあり、これは他の科には無い特徴です。
これからまだまだ発展する分野であり未知の領域を切り拓く楽しさがあるということも知って頂ければと思います。
「これからどうやって生きていけばいいんですかね。」回復期リハビリテーション病棟へ転棟されてきた患者さんの声です。脳卒中や運動器疾患等で思うように体が動かなくなり、今後の生活に不安を覚える患者さんは数多くいらっしゃいます。リハビリテーションというと一般的には身体的な介入のイメージがありますが、実際には精神的、社会的な側面からもアプローチをしていくことが求められます。
「仕事に戻れるのか。また畑をやりたい。ドライブで温泉へ。夫婦で記念日の外食へ。孫との散歩を。友達とカラオケを。いつまでも家で過ごしたい。」それぞれの患者さんの思いに耳を傾け、障害をアセスメントしながら、退院後の生活を共にデザインしていくことがリハ医の醍醐味であると感じています。自宅の環境やご家族のサポート体制を考慮することは勿論のこと、患者さん自身がこれまで生きてきた証、価値観を踏まえた上で目標を設定していきます。退院後の生活を考える上では、病院の中だけでは完結しないことも多々あります。そのような場合は実際に患者さんのご自宅や畑へ訪問し、生活スタイルを考慮した上で環境を調整します。
「この部屋から花がよく見えるんだよ。」その一言で寝室の場所を変更する事もあります。ただ患者さんの希望を受け入れるのではなく、リハとしての視点で患者さんの動作能力を考慮した上で居間やトイレまでの動線を確認、段差や手すりなどの環境調整、夜間の排泄方法等を検討する事は不可欠です。「この家には手すりはつけてほしくないんだよ。」ご自宅への思い入れがある場合も勿論あるため、住宅改修だけに固執せず、様々な福祉用具や代替案を検討していきます。臨機応変に対応するためには院内のスタッフとの連携は言うまでもなく、ケアマネージャーやヘルパー、福祉用具・住宅改修業者、通所先のスタッフとも連絡を取ることもあります。
障害によって病前同様の生活が困難であっても、やり方を工夫したり、道具を使ったり、周囲のサポートを受けることで活動の幅を広げることができます。自宅に退院する事はゴールではなく、今後の人生を少しでも不安や心配が少なく笑顔で過ごせることを目標にしています。複雑な社会背景をお持ちの患者さんに対してもガイドラインや明確な正解がない問いの中で、日々試行錯誤しながら、やりがいを感じている毎日です。このように患者さんの生活を第一にした視点を持ちたくて、私はリハ科医を志しました。
私は群馬大学医学部を卒業し、群馬県内で初期研修を行った後、卒後3年目で群馬大学リハビリテーション科の研修プログラムを選択しました。
リハビリテーション科の魅力は、疾患だけでなく疾患から生じた障害を診る視点が得られること、その視点を元に「生活」に重点をおいた診療ができることだと思います。
私は学生のころから、どちらかというと疾患の治療よりも症状の治療に興味がありました。もちろん原疾患の治療が最重要ですが、完治できない場合に残った症状に対応でき、患者さんに寄り添える医師になりたいと思っていました。その際に出会ったのがリハビリテーション科です。障害の治療はもとより、残存した機能に応じて、どのようにしたら患者さんの希望に沿うことができるか。そのようなことを深く考えられる医学分野であることを知り、リハビリテーション科の研修プログラムを選択しました。
現在、私は回復期リハビリテーション病棟で主治医として働いています。脳卒中、脊髄損傷、廃用症候群の方が大部分を占めます。疾患で分けてしまうとあまりバリエーションはありませんが、障害として捉えると人それぞれ多様な症状を呈しています。片麻痺なのか、対麻痺なのか、四肢麻痺なのか、感覚障害を伴うのか、視野欠損はないか、高次脳機能障害はどうかなど。同じ疾患でも部位・程度により障害の組み合わせは異なります。ケースごとにアプローチを検討する必要があります。
その上で、「生活」の視点がとても重要となります。回復期病棟でリハ訓練を行うことの最終目標は、患者さんが希望する生活へ帰ってもらうことになります。ただ退院すればいいわけではありません。日中はどこで何をして過ごして、夜間はどこで眠るのか。トイレや食事の準備はどうするのか。食形態はどのようなものが安全か。どのような介助が必要か。住宅改修は必要か。残存した機能で具体的にどのように生活をしていくことが可能か、希望を叶えるにはなにが必要か、といったことをあらかじめ想像し介入する必要があります。同じ症例は二つとなく、リハビリテーションチームのメンバーと本気で悩み考える毎日です。
現在研修している病院にはリハビリテーション治療の経験豊富な医師、専門職が多数在籍しており、それぞれの専門分野の知識を得ることができます。そこに自分の知識・考えをかけ合わせたときに、より良いの介入法を考えつき、結果として患者さんの希望を叶えられた際には大きな達成感を得ることができます。ここでの知識・経験はリハビリテーション科医として働かないと得られないものだと思います。
もちろん疾患をベースに障害が生じているわけですから、合併症の併発は多々あり、その都度主治医として治療する必要があります。脳卒中では神経因性膀胱に対応する必要がありますし、脊髄損傷では褥瘡の発生を予防し、発生した場合にはすぐ治療を行います。入院中に新規に肺炎・尿路感染症を始めとした内科的合併症を併発することも多々あります。今後さらなる疾患の併発を予防するため、高血圧、糖尿病など生活習慣病をはじめとする併存症の治療も必要です。研修の中で一般的な内科治療行い、学ぶ必要があります。
リハビリテーション科は、その分野の幅広さから多種多様な働き方があり、一言でどういう科だと説明することができません。そのため、馴染みのない人にはなかなか伝わりづらく、悩んでしまいます。ただ、リハビリテーション科研修にやりがいを感じていることに間違いはありません。
医師として、患者さんへの寄り添い方にはいろいろな方法があるかと思います。『障害を負ってしまった、でも「生活」に戻りたい』という患者さんの力になりたい方は、ぜひリハビリテーション科での研修を考えてみてください。
私は2016年に大学を卒業し、2年間の初期研修終了後、3年目に群馬大学リハビリテーション科に入局しました。4年目に前橋赤十字病院リハビリテーション科で急性期~回復期の患者のリハビリテーション医療の研修を経て、現在5年目で出身大学の医師派遣で上野村へき地診療所に勤務しています。
リハビリテーションは一般的には機能回復のための訓練などを意味すると理解されている方が多いですが、本来的には「再び適した状態になること、再び本来あるべき状態になること、再び人間らしい状態になること」等の意味合いがあり、元々は中世にキリスト教会から破門された方が名誉と権利を取り戻すことを意味していた様です。私も上記の語源に基づき、病気やけがの後遺症で、それまでのその人らしい生活が送りにくくなってしまった方に対して、回復できるところは運動療法での回復を促すのに加え、回復困難な「障害」に対しては、その方の生活環境を障害があっても生活しやすいように調整することが私たちリハビリテーション医学に関わるスタッフの仕事と認識しています。私自身がリハビリテーション科での研修を希望した理由は上記のような理念に基づき、他分野に渡る技術を身に着け、多職種との連携を図ることができるようになりたい、という思いがあったからです。
リハビリテーション科の病院での具体的な業務は肺炎や心不全、脳梗塞や骨折などのご病気で病院に入院された方に対して理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の主に3職種を処方し、病気からの体の回復を促進のお手伝いをさせて頂くことが主になっています。その中で医師は、病気で弱った体が運動によってどこまで回復が見込めるかを予測し、どのような運動のメニューを組むかを各種職種と話し合い、安全に運動を行うためにどんな点に気を付けたほうが良いかを各種のスタッフに伝達したりしています。その他、飲み込みの能力が低下してしまった方が、誤嚥に伴う肺炎をおこすことなく安全に口から食事を食べていけるように、内視鏡やレントゲンの透視での検査を併用し、食べ方・食べるものの内容・食べるときの姿勢などに関して助言をさせて頂くことも主な業務の一つです。
前年度に勤務していた前橋赤十字病院では、上記に加え、「回復期リハビリテーション病棟」と呼ばれる2000年から制度化された、病後の回復と在宅復帰支援を目的とした病棟での主治医業務も行っていました。そこでは入院環境でありながら、在宅生活へのスムーズな移行を目的として、運動療法での身体の回復促進に加え、介護保険制度等を用いて在宅療養環境整備を進める仕事をしていました。もちろん、病棟内では高血圧症や糖尿病、心不全、腎臓病など、入院中の患者さんが有する併存症に関しての対応力も必要とされるため、時に各科専門の医師と相談しつつ、診療を進めていました。
現在は診療所勤務ですが、村民の方々の健康的な生活を支える知識・技術としてリハビリテーション科で積んできた研修内容は非常に役立っていると感じます。具体的には、村内の訪問リハビリテーションの会議で個々の患者の疾病状況や身体機能、環境状況に合わせた運動療法支援の計画をスタッフと一緒に考えたり、義肢装具士と連携して義肢・装具処方のための専門外来を開き、個々の障害に応じた義肢・装具の適応を検討したりといったことに協力させて頂いています。
何らかの障害や疾病を有する患者の「生活上での困りごと」に対応するための医療技術・知識を学びたいと考える方が入れば、是非リハビリテーション科での研修も選択肢の一つとして検討してもらえればうれしいです。
私は現在医師3年目で、市中病院で2年間の初期臨床研修終了後、群馬大学医学部附属病院リハビリテーション科に入局いたしました。後期研修先を決める際、いろいろな疾患の患者さんをじっくり診ることができる科に進みたいと思い、リハビリテーション科を選択しました。
私は今、群馬大学医学部附属病院で勤務しており、急性期の患者さんの担当をしています。脳疾患や神経筋疾患、整形外科疾患、切断、内科的疾患など幅広い分野の疾患を持つ患者さんを診る機会があります。また、嚥下内視鏡や嚥下造影検査、ボツリヌス治療などの手技も指導医の先生のもと多く経験させていただいています。
リハビリテーション科というと、脳外科や神経内科、整形外科などの先生が各科での臨床経験を積んだ後に進まれるイメージが強く、初期研修終了後の3年目から入局することに対し正直不安はありました。しかし、リハビリテーション科で診る疾患の分野は広いため初期臨床研修で各科をローテーションした知識を役立てることができるのではないかと思います。また、指導医の先生方は各科で専門医を持っており、診療に必要な知識を教えていただけ、相談などもしやすい雰囲気で、日々充実した後期研修生活を送ることができています。
群大リハビリテーション科はオンオフがはっきりしています。私は体力に自信がありませんでしたが、勤務中はしっかりと働き、それ以外の時間は自分の趣味や勉強に充てることができています。また、家庭と仕事を両立されてる先生方も多くいらっしゃり、将来的にライフスタイルが変わったとしても無理なく仕事を続けることができる点もとても魅力的に感じています。
私は初期研修でリハビリテーション科をローテーションするまでは、リハ科医の仕事を漠然としか理解できていませんでした。リハビリテーション科に興味を持った方は是非一度見学・研修にいらしてください。